ビジネス用語ナビ

退職金がない会社に勤めることになり、将来への不安を感じていませんか?

実は日本企業の約4社に1社は退職金制度がありません。しかし、退職金がないことは違法ではなく、むしろ隠れたメリットもあるのです。

この記事では、退職金がない会社の実態や法的な位置づけを解説するとともに、老後の資金計画の立て方や活用できる制度まで、具体的な対策をご紹介します。

退職金の有無に不安を感じている方は、ぜひ参考にしてください。

退職金制度とは

退職金制度とは、従業員が退職する際に企業から支給される一時金や年金のことを指します。

勤続年数や業績に応じて金額が決まり、老後の生活資金や再就職までの生活を支える役割を果たします。

退職金制度の概要

退職金制度は、従業員が会社を退職する際に支給される一時金のことを指します。長年の勤務に対する功労金としての性格と、退職後の生活保障としての性格を併せ持っています。

支給額は、基本給に勤続年数や退職理由などの係数を掛けて算出するのが一般的です。退職金制度は法律での義務付けはなく、各企業が任意で導入する制度となっています。

そのため、制度の有無や支給条件、金額などは就業規則や労働協約で定められ、企業によって大きく異なります。

近年では、従来の退職一時金制度から確定拠出年金(企業型DC)や確定給付企業年金(DB)などの企業年金制度へ移行するケースも増えています。

また、中小企業向けには、国の制度として中小企業退職金共済制度(中退共)が用意されており、計画的な資金準備を支援しています。

退職金制度の平均相場

退職金の平均相場は、企業規模や勤続年数によって大きく異なります。

大企業の場合、大卒で定年退職を迎えると約2,230万円が平均的な支給額となっていますが、中小企業では大卒の定年退職で約1,092万円、高卒で約994万円が相場です。

勤続年数別に見ると、大企業では勤続10年で約310万円、20年で約953万円、30年で約1,915万円と、年数に応じて段階的に増加していきます。

また、退職理由によっても金額は変動し、会社都合の方が自己都合より高額となるのが一般的です。

業種別では、金融・保険業が最も高く定年時で約1,442万円、医療・福祉業が最も低く約342万円と、業種による差も大きくなっています。

なお、企業によっては退職金制度を設けていない場合もあり、特に中小企業ではその傾向が強く見られます。

参考:厚生労働省『令和3年賃金事情等総合調査

東京都産業労働局『中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)

退職金がないのは合法である

退職金がないことは法律上の問題はなく、退職金は企業の福利厚生の一つとして位置づけられており、労働基準法でも支払い義務は定められていません。

企業は退職金制度を導入するかどうかを自由に選択できますが、就業規則や雇用契約書に退職金の支給条件が明記されている場合は、その条件を満たす従業員への支払いが法的義務となります。

一般的に、企業の規模が小さいほど退職給付制度を導入していない傾向があり、特に宿泊業や飲食サービス業ではその導入率が低いとされています。

退職金制度の有無は企業の裁量に委ねられており、制度がなくても違法性はありません。むしろ、その分を毎月の給与やボーナスに上乗せして支給する企業も多く存在します。

退職金がない会社の比率

厚生労働省の令和5年就労条件総合調査によると、退職金制度がない企業の割合は全体の24.8%となっています。

企業規模別に見ると、従業員1,000人以上の大企業では90.1%が退職金制度を導入しているのに対し、従業員30~99人の企業では70.1%にとどまります。

業種別では、宿泊業・飲食サービス業で57.8%、サービス業で45.6%、生活関連サービス業・娯楽業で30.7%と、サービス業関連で退職金制度がない企業の割合が特に高くなっています。

このように、企業規模が小さいほど、またサービス業を中心とした特定の業種において、退職金制度を持たない企業が多い傾向にあります。

これは、コスト削減のために退職金制度を設けず、その分を給与や福利厚生に振り分けているケースが多いためです。

参考:厚生労働省『令和5年就労条件総合調査

退職金は減少傾向にある

退職金は過去20年で大幅な減少傾向にあります。

大卒以上の管理・事務・技術職の定年退職者の場合、1997年には平均2,871万円だった退職金が、2018年には1,788万円まで減少し、約1,000万円以上も下がっています。

この減少の主な要因は、バブル崩壊後に企業が内部留保を重視し人件費を削減したことにあります。

また、多くの企業が確定拠出年金への移行を進めたことや、長期的な運用利回りの低下も影響しています。

さらに、転職が一般的になってきたことで、キャリアの最終期に報酬を手厚く支払う従来型の退職金制度の意義が薄れてきたことも、減少の一因となっています。

企業側も成果主義的な計算方法を導入し、勤続年数よりも成果を重視する傾向が強まっており、これが退職金減額の要因の一つとなっています。

参考:厚生労働省『就労条件総合調査

退職金制度があるのに退職金が支給されない理由

退職金制度があるにもかかわらず退職金が支給されない場合、どのような理由が考えられるのでしょうか。

ここでは、主な理由や背景について詳しく解説します。

雇用形態の違い

契約社員やパート社員などの非正規雇用の従業員は、退職金が支払われないケースが多く存在します。

2020年から「同一労働同一賃金」が導入され、正規雇用と非正規雇用の間の不合理な待遇差を解消する動きが始まりました。

しかし、賃金や賞与などの面での待遇差は禁止されているものの、退職金については明確な規定がないため、雇用形態による格差が依然として残っています。

特に大企業では、契約社員への退職金支給率は12.2%程度にとどまっており、正社員との待遇差が顕著です。

ただし、同一労働同一賃金の観点から、契約社員が正社員と同じ業務を行っている場合は、退職金の不支給が不合理と判断される可能性もあるため、企業側の説明が求められます。

勤務年数の不足

勤続年数が会社の定める支給要件を満たしていない場合、退職金を受け取ることができません。

厚生労働省の調査によると、多くの企業では勤続3年以上を退職金の支給条件としており、会社都合の場合で42.2%、自己都合の場合で56.2%の企業がこの基準を採用しています。

一方、勤続1年未満での退職では、会社都合でも8.5%、自己都合では3.2%の企業しか退職金を支給していません。

退職金の支給要件となる勤続年数は会社によって異なるため、入社時に就業規則や退職金規程をしっかりと確認することが重要です。

特に中途採用の場合は、勤続年数の起算日が新卒社員と異なることもあるため、具体的な支給条件を把握しておく必要があります。

参考:厚生労働省『令和5年就労条件総合調査

退職金なしのメリット

退職金制度がない会社で働くことに不安を感じる方も多いでしょう。しかし実は、退職金がないからこそ得られる利点がいくつかあります。

ここでは、退職金なしの会社で働く際の具体的なメリットについて、詳しく解説していきます。

退職金の受け取り手続きが不要

退職金を受け取る際には、「退職所得の受給に関する申告書」の提出や、退職金に関する確定申告などの手続きが必要となります。

しかし、退職金制度がない会社では、これらの煩雑な手続きをする必要がありません。

退職金は「退職所得」として課税対象となり、適切な税金計算のために確定申告が必要になることもありますが、退職金がない場合はそのような手間がかかりません。

また、退職金の受け取りには、退職金請求書の作成や金融機関での口座確認、必要書類の準備など、複数のステップを踏む必要があります。

退職金制度がない会社であれば、これらの手続きに時間を取られることなく、スムーズに次のステップに進むことができます。

老後の資金計画を立てやすい

退職金制度がある場合、受け取れる金額は会社の業績や経営状態に大きく左右されます。

業績悪化による退職金のカットや、最悪の場合、会社の倒産により退職金が支給されないリスクもあります。

一方、退職金がない場合は、最初から退職金を当てにしない資金計画を立てることができます。

月々の給与から着実に貯蓄や資産形成を行うことで、より確実な老後の資金計画を立てることが可能です。

また、iDeCoやつみたてNISAなどの投資商品を活用することで、長期的な資産形成を自分でコントロールすることができます。

月給が高い傾向にある

退職金は賃金の後払いという性質を持っているため、退職金がない企業ではその分を毎月の給与やボーナスに上乗せして支給するケースが多く見られます。

企業にとって退職金は将来の支払いに備えて積み立てが必要ですが、退職金制度がない場合はその資金を現在の給与に回すことができます。

特に、若手社員にとってはメリットが大きく、早い段階から高い収入を得られることで、貯蓄や資産運用の機会が増えます。

また、多くの企業では退職金の支給に3年以上の勤続年数を条件としていますが、給与として受け取る場合は勤続年数に関係なく、入社後すぐから受け取ることができます。

このため、転職やキャリアチェンジの際の自由度も高くなります。

退職金なしのデメリット

退職金がない会社で働く場合、老後資金の準備やキャリア形成において課題が生じることがあります。

ここでは、退職金なしのデメリットについて詳しく解説します。

老後の資金計画を自主的に行う必要がある

退職金がない場合、老後の資金計画は完全に自己責任となります。

多くの日本企業では退職金が老後の生活資金の重要な一部として期待されてきましたが、それがない場合は個人でしっかりと資産を形成していく必要があります。

また、毎月の給与から一定額を貯蓄に回すなど、長期的な視点での資金計画が不可欠です。

特に住宅ローンの返済や子どもの教育資金など、大きな出費が必要になった際に経済的な不安を感じやすくなる可能性があります。

そのため、退職金に頼れない分、より早い段階から将来を見据えた資産形成を始める必要があるでしょう。

死亡退職金が支給されない可能性が高い

退職金がない企業では、死亡退職金も支給されない可能性が高くなります。

死亡退職金は遺族の生活保障として重要な役割を果たすものですが、退職金制度自体がない場合、死亡時の給付も期待できません。

企業によっては弔慰金や功労金という形で支給されることもありますが、これらは企業の任意であり、確実な保障とはなりません。

特に、家族を持つ従業員は、万が一の場合に備えて遺族の生活資金を確保できるよう、計画的な準備が重要となります。

また、退職金制度がない企業に勤める場合は、給与水準や他の福利厚生制度も含めて総合的に待遇を検討し、必要に応じて個人で保障を補完することを検討すべきでしょう。

死亡弔慰金をもらえることはある

死亡弔慰金は、退職金制度がない企業でも支給されることがあります。弔慰金は故人の功労を称え、遺族を慰めるための金銭であり、退職金とは異なる性質を持つためです。

弔慰金には非課税枠が設けられており、業務上の死亡の場合は月額給与の36か月分まで、業務外の死亡の場合は月額給与の6か月分までが非課税となります。

ただし、弔慰金と死亡退職金が明確に区分されていない場合は、全額が死亡退職金として扱われ、相続税の課税対象となる可能性があるため注意が必要です。

なお、企業が従業員の死亡に備えて「総合福祉団体定期保険」などに加入している場合は、その保険金から弔慰金が支払われることもあります。

退職金なしへの対策

退職金がない会社で働く場合、将来の経済的な不安は避けられません。しかし、早めに対策を講じることで、退職後の生活を安定させることは可能です。

ここでは、退職金がない場合の具体的な対策方法について詳しく解説していきます。

計画的に貯金する

退職金なしの場合、老後に向けた計画的な貯金が必要な対策となります。まずは老後に必要な資金を試算し、そこから逆算して毎月の貯蓄額を決定しましょう。

例えば65歳までに3,000万円を準備するためには、30歳から始めた場合、月々約7万2,000円の積み立てが必要となります。

貯金を確実に実行するコツは、給与を受け取ったらすぐに決めた金額を貯金口座に移すという「先取り貯金」の方法です。

使える金額が先に決まっていれば、残りの範囲内で生活費をやりくりする習慣が身につきます。

また、普通預金だけでなく、定期預金や財形貯蓄制度を活用することで、つい使ってしまうことを防ぐことができます。

資産運用を始める(NISA・iDeCo・企業型DCなど)

退職金がない場合の資産形成には、税制優遇のある制度を活用するのも効果的です。

2024年から始まった新NISAでは、つみたて投資枠(年間120万円)と成長投資枠(年間240万円)を併用でき、非課税で資産運用が可能になりました。

iDeCoは月額5,000円から始められ、掛金が全額所得控除され、運用益も非課税となります。ただし、原則60歳まで引き出しができない点に注意が必要です。

企業型DCが導入されている会社では、企業が毎月掛金を拠出してくれます。

さらに、マッチング拠出制度を利用すれば、自身で上乗せ投資することもでき、その分も所得控除の対象となります。

特に若いうちから始めることで、長期の資産形成効果が期待できます。

保険に入る

退職金の代わりに保険を活用することで、将来の経済的な備えを整えることができます。

特に個人年金保険や積立保険は、毎月一定額を積み立てることで退職後の生活資金を確保できる有効な手段です。

具体的には、個人年金保険なら60歳以降に年金として、積立保険は満期時に一時金として受け取ることが可能です。加入時期が早いほど掛け金が少なくて済むため、20代や30代からの加入がおすすめです。

生命保険料控除の対象となるため、税制上のメリットも得られますが、保険商品は種類が多く内容も複雑なため、自身のライフプランに合わせて慎重に選ぶことが重要です。

加入前には複数の保険会社の商品を比較検討し、掛け金や保障内容、受取時期などをしっかりと確認しましょう。

個人年金に加入する

個人年金保険は、公的年金や退職金を補完する私的年金の一つとして活用できます。

加入時の大きな特徴として、多くの場合、健康状態の告知や医師の診査が不要なため、健康に不安がある方でも申し込みやすい制度となっています。

個人年金保険の受取方法は、年金形式での受け取りが基本ですが、一時金として受け取ることも可能です。加入者のライフプランに合わせて柔軟な受け取り方を選択できるのが特徴です。

ただし、途中解約時には元本割れのリスクがあるため、長期的な視点で加入を検討する必要があります。保険料の支払いは月払いや一時払いなど複数の選択肢があり、自身の収入状況に合わせて選ぶことができます。

将来の生活設計に応じて、保険料や受取時期、受取方法などを総合的に検討し、自分に合った商品を選びましょう。

確定拠出年金を利用する

確定拠出年金も退職金の代替手段として効果的で、企業型と個人型(iDeCo)の2種類があり、毎月一定額を積み立てて自己責任で運用する仕組みとなっています。

企業型では会社が掛金を拠出し、個人型は自分で掛金を拠出して運用します。特徴的なのは、運用益が非課税で、受け取り時には退職所得控除の対象となる税制優遇があることです。

60歳以降に一時金または年金として受け取ることができ、会社を退職・転職しても資産を持ち運べる利点があります。

例えば、25歳から月額2万円を35年間積み立て、年率3%で運用した場合、60歳時点で約1,483万円の資産形成が可能となります。

将来の生活資金確保のため、若いうちからの加入がお勧めです。企業型の場合は、従業員による追加拠出(マッチング拠出)も可能なため、より効果的な資産形成が期待できます。

退職金のある会社への転職を検討する

退職金制度がない会社で働く場合、老後資金の準備は自己責任となります。そのため、退職金制度が整備されている会社への転職を検討することは、有効な選択肢の一つです。

退職金制度がある会社では、長期的に勤めることで老後の生活資金を確保しやすくなります。

また、退職金は福利厚生の一環として位置づけられるため、従業員に対する企業の姿勢や待遇の良さを示す指標ともいえます。

転職活動を行う際には、求人情報や面接時に退職金制度の有無や内容をしっかり確認しましょう。特に、支給条件や計算方法について把握しておくことが重要です。

さらに、転職先を選ぶ際には、退職金だけでなく給与や福利厚生全体のバランスも考慮することで、より安定したキャリア設計が可能になります。

副業を始める

退職金がない場合の将来の備えとして、副業を始めることも有効な手段です。副業を通じて収入源を増やすことで、老後資金を自分で計画的に準備できます。

現在では、インターネットを活用したリモートワークやフリーランスの仕事、オンラインショップの運営など、多様な副業の選択肢があります。

ただし、副業を始める際には、まず就業規則を確認し、会社で許可されているかどうかを確認することが重要です。

許可が得られない場合でも、投資や資産運用といった方法で収入を増やすことも検討できます。

副業はスキルアップにもつながり、本業に役立つ場合もあります。時間管理や体力面での負担を考慮しながら、自分に合った方法で収入源を確保しましょう。

退職金なしまとめ

退職金なしの会社は法律上問題ありませんが、老後の資金計画には早めの準備が必要です。

退職金の代わりに給与が高めに設定されていたり、資金計画が立てやすいなどのメリットもあります。

将来に備えて個人年金の活用や計画的な貯蓄を始めることをおすすめします。不安がある方は、退職金制度のある企業への転職も視野に入れてみましょう。

まずは自身の老後に必要な資金を試算し、今からできる対策を考えていきませんか?