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価格改定は、多くの企業にとって避けて通れない重要な経営課題ですが、その変更を顧客に伝える際には、慎重に行動しなければ信頼関係に悪影響を及ぼす可能性があります。

そのため、顧客に対して適切なタイミングと方法で伝えることが、今後の関係をより強固にするために非常に大切です。

本記事では、価格改定の必要性を顧客に理解してもらうために、顧客の感情を尊重しつつ効果的に伝える方法について、具体的なメール作成のポイントを詳しく解説します。

「価格改定のお知らせメール」書き方のコツ

ここでは、「価格改定のお知らせメール」の書き方のコツをご紹介します。

言葉遣いに配慮する

価格改定メールの言葉遣いは、顧客の感情に大きく影響します。

まず、「値上げ」という直接的な表現は避け、「価格改定」や「価格変更」といった穏やかな言葉を選びましょう。

お詫びの気持ちを込めつつ、謙虚で丁寧な表現を心がけましょう。

例えば、「誠に恐縮ではございますが」「大変申し訳ございません」といった言葉で、真摯な姿勢を示すことができます。

具体的で誠実な理由を説明する

価格改定の理由を説明する際は、お客様の立場に立って具体的かつ誠実に状況を伝えることが大切です。

単に「値上げします」と言うのではなく、原材料費の高騰、人件費の上昇、エネルギーコストの増加など、客観的な背景を明確に示します。

例えば、「近年の原材料価格の急激な上昇により、現行の価格を維持することが困難となりました」といった説明は、お客様に状況を理解してもらうのに効果的です。

事前通知と十分な準備期間を設ける

価格改定を顧客に伝える際は、十分な余裕を持って事前通知しましょう。急な値上げは顧客の不信感を招き、ビジネス関係を損なう可能性があるためです。

できる限り早めに価格改定の情報を共有し、具体的な変更日と詳細を明確に伝えましょう。

理想的には、価格改定の少なくとも1〜2ヶ月前には顧客に通知し、新価格への移行期間を設けることで、顧客に心理的・経済的な準備の機会を提供できます。

このアプローチにより顧客は変更を受け入れやすくなり、信頼関係を維持することができます。

努力の過程を共有する

また、価格維持のために行ってきた企業の努力を具体的に共有することも欠かせません。

コスト削減のための業務効率化、生産プロセスの見直し、経費の徹底的な見直しなど、価格を据え置くために行ってきた内部の取り組みを誠実に説明しましょう。

このアプローチにより、顧客は企業が安易に値上げを決定したのではなく、最後の手段として価格改定を選択したことを理解できます。

結果として、顧客の理解と共感を得やすくなり、信頼関係を維持できる可能性が高まります。

感謝と今後の価値提供への約束をする

お客様への感謝の気持ちを丁寧に伝えることも、価格改定メールのポイントです。

日頃のご愛顧に対する深い感謝の言葉を冒頭に記載し、価格改定後も変わらぬ高品質なサービスや製品の提供を約束することが大切です。

お客様との信頼関係を維持するためには、単なる価格変更の通知だけでなく、今後どのように価値を高めていくかを具体的に示すことが求められます。

例えば、「今後も継続的な品質改善」「お客様のニーズに応える新たな取り組み」「より付加価値の高いサービス提供」などを明確に伝えることで、価格改定に対する理解と共感を得やすくなります。

価格改定のお知らせメールの構成

ここでは、価格改定のお知らせメールの構成についてご紹介します。

件名

価格改定メールの件名では、直接的な「値上げ」という表現は避け「価格変更」「価格改定」のような中立的な言葉を使用することが重要です。

メールの重要性を伝えるため、「【重要】価格改定のご案内」や「【お知らせ】商品価格変更について」といった形式で、顧客の注意を引きつつ、誠実さと丁寧さを表現しましょう。

件名は簡潔かつ明確に、メールの内容を一目で理解できるようにすることが求められます。また、スパムフィルターに引っかからないよう、過度に刺激的な表現は避けるべきです。

宛名

価格改定メールの宛名は、ビジネスコミュニケーションにおける最初の重要な接点です。

「お客様各位」は最も汎用的で丁寧な宛名表現であり、特定の個人名が分からない場合や、不特定多数の顧客に向けて送付する際に最適です。

ただし、可能な限り具体的な宛名を使用することが望ましいです。例えば、

  • 法人の場合:「株式会社○○ 御中」
  • 個人の場合:「○○様」

のようにしましょう。

挨拶・名乗り

価格改定メールの冒頭​で、まずは日頃のご愛顧への感謝の気持ちを丁寧に伝えましょう。

「いつも格別のご高配を賜り、心より感謝申し上げます」といった表現で、顧客との長年の信頼関係を再確認します。

続いて、自社の名前と担当者名を明確に示すことで、誠実さと透明性をアピールします。

「株式会社○○、営業部の△△です」のように、具体的に自己紹介することで、顧客に安心感を与えることができます。

本文

価格改定メールの本文では、顧客への感謝の気持ちを伝えましょう。

その後、価格改定に至った背景や理由を誠実に説明し、原材料費の高騰や生産コストの上昇などの具体的な事情を簡潔に記載することで、顧客の理解を得やすくなります。

価格改定の内容は、明確かつ具体的に示す必要があります。対象となる商品やサービス、改定後の価格、適用開始日を分かりやすく記載し、顧客が混乱しないよう配慮しましょう。

最後に、今後も高品質な製品やサービスの提供に努める決意を伝え、顧客との信頼関係を維持する姿勢を示すことが大切です。

締め

価格改定のお知らせメールの締めは、顧客との関係性を維持するためにも大切です。

お客様への感謝の気持ちを丁寧に表現し、今後も変わらぬご愛顧をお願いする謙虚な姿勢が求められます。

具体的には、これまでのご支援に対する深い感謝を伝えるとともに、価格改定後も高品質なサービスや製品の提供に全力を尽くす決意を示すことが大切です。

署名

メールの署名は、基本的には会社名、部署名、担当者名、連絡先情報を明確に記載しましょう。具体的には、以下の情報を含めることをおすすめします。

  • 会社名
  • 部署名
  • 担当者の氏名(フルネーム)
  • 電話番号
  • メールアドレス
  • 会社住所

また、問い合わせ先を明確にすることで、顧客の不安や疑問にも迅速に対応できる体制であることをアピールできます。

【例文】業種別の価格改定メールの書き方

ここでは、業種別の価格改定メールの書き方を例文を使用してご紹介します。

食品・飲料業界

件名: 価格改定のお知らせ

お客様各位

平素より格別のご愛顧を賜り、誠にありがとうございます。

近年、輸入原材料の価格高騰や、天候不良による農産物の収穫減少が続いており、これらの影響により製造コストが大幅に増加しております。

また、物流コストや包装材の価格も上昇し、品質を維持しながら安定的に商品を供給するためには、価格改定が避けられない状況となりました。

当社では、品質保持のために徹底した管理を行い、価格の維持に最大限努めてまいりましたが、現在のコスト上昇を吸収することが難しくなり、2025年3月1日より一部商品の価格を改定させていただきます。

お客様にはご負担をおかけいたしますことを深くお詫び申し上げますが、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。

今後もお客様にご満足いただける品質の製品を提供するため、引き続き努力してまいりますので、変わらぬご愛顧を賜りますようお願い申し上げます。

メーカー業界

件名: 価格改定のお知らせ

お客様各位

平素より格別のご愛顧を賜り、誠にありがとうございます。

昨今の原材料費の高騰、特に特殊合金や高品質プラスチックなどの資材費が急激に上昇し、さらに一部の生産設備の老朽化によるメンテナンスコストの増加が続いております。

このため、誠に遺憾ながら2025年3月1日より一部製品の価格を改定させていただくこととなりました。

当社では、製品の品質維持と供給の安定を最優先に考え、効率化やコスト削減に取り組んでまいりましたが、これらのコスト増を吸収することが困難な状況に至りました。

お客様にはご負担をおかけすることとなり、深くお詫び申し上げますが、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。

引き続き、品質と技術革新にこだわり、より一層の努力を重ねてまいりますので、今後とも変わらぬご愛顧を賜りますようお願い申し上げます。

飲食店

件名: 価格改定のお知らせ

お客様各位

いつもご愛顧いただき、誠にありがとうございます。

日頃よりご利用いただいておりますが、昨今の食材の仕入れ価格の高騰、特に新鮮な野菜や魚介類、肉類などの原材料費が大きく影響し、また光熱費や人件費の増加が続いております。

このような状況を受け、誠に遺憾ながら2025年3月1日より一部メニューの価格を改定させていただくこととなりました。

私たちとしましては、お客様にご満足いただける品質とサービスを維持するために、できる限りの努力をしてまいりましたが、現在のコスト上昇を吸収することが難しくなり、このような決定をさせていただきました。

お客様にはご負担をおかけすることとなり、大変心苦しく思っておりますが、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。

今後も、変わらぬ品質とサービスを提供し、より一層の努力を重ねてまいりますので、引き続きご愛顧賜りますようお願い申し上げます。

サービス業

件名: 価格改定のお知らせ

お客様各位

平素より格別のご愛顧を賜り、誠にありがとうございます。

この度、長年にわたり価格を据え置いてまいりましたが、近年の人件費や設備の維持費の増加、さらにはサービス品質向上のための投資が必要となり、誠に遺憾ながら2025年3月1日より一部サービスの価格を改定させていただくこととなりました。

お客様にはご負担をおかけすることとなり、心苦しく思っておりますが、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。

引き続き、お客様にとって価値あるサービスを提供し続けるため、全力で取り組んでまいりますので、変わらぬご愛顧を賜りますようお願い申し上げます。

価格改定メールまとめ

価格改定は、どの業界においても避けられない経営判断の一つです。

原材料費の高騰や人件費、物流費の上昇など、企業が直面するコスト増加の圧力に対応するためには、価格改定が必要となります。

しかし、価格改定を実施する際に最も重要なのは、顧客との信頼関係を維持しつつ、しっかりとその理由を伝えることです。

誠実で透明性の高いコミュニケーションを心がけ、顧客に対して負担をかけることへの理解を求めることが重要です。

本記事で紹介したテクニックを参考に、顧客の心情に寄り添った、わかりやすく丁寧な価格改定メールを作成しましょう。