公益財団法人という名称をよく目にするものの、一般財団法人やNPO法人との違いがわからない方も多いのではないでしょうか。
本記事では、公益財団法人の定義や特徴を分かりやすく解説するとともに、他の法人形態との違いや給与水準についても詳しく説明します。
これから就職や転職先として公益財団法人を検討している方も、この記事を読めば公益財団法人の全体像を把握することができ、より良い判断を下せるようになるはずです。
「公益財団法人」とは何?
ここでは、「公益財団法人」についてご紹介します。
「公益財団法人」とは
公益財団法人は、公益を目的として活動する法人であり、一定の財産を基に設立される組織です。設立には、内閣府または都道府県の行政庁から公益認定を受ける必要があります。
公益財団法人の最大の特徴は、法人自身の利益を追求するのではなく、社会に対して良い影響を与える事業を行うことです。
そのため、活動資金の多くは公益目的事業に充てられ、法令で定められた公益事業の範囲内で運営されます。
また、公益財団法人には税制上の優遇措置があり、法人自身の税負担が軽減されるほか、寄付を行った個人や企業にも税制優遇が適用されるため、資金を集めやすいというメリットがあります。
「公益財団法人」が活動できる条件
公益財団法人として活動するためには、公益目的事業を主たる目的とすることが求められ、特定の個人や団体に対して特別な利益を与えるような行為は禁止されています。
また、公益目的事業による収入は適正な費用を超えてはならず、過度に財産を蓄積することも認められていません。
運営面においても厳しい基準が設けられています。例えば、経理の基礎がしっかりしていること、適切な管理運営ができる技術的能力を有していることが求められます。
また、理事や監事の過半数が親族や密接な関係者で占められることを避けるため、ガバナンス基準も定められています。
さらに、定期的な事業報告や財務状況の開示が義務付けられており、内閣府や都道府県の監督を受ける必要があります。
「公益財団法人」の事業内容
公益財団法人が行える事業は、学術、技芸、慈善などの公益に関するものに限られています。これらの事業は、不特定かつ多数の人々の利益向上に貢献する必要があります。
具体的な事業分野としては、
- 学術・科学技術の振興
- 文化・芸術の振興
- 障害者や生活困窮者の支援
- 高齢者福祉の促進
- 勤労者の福祉向上
- 教育やスポーツを通じた国民の健全な発達
などが挙げられます。
また、公益目的事業を行う際には、その収入が適正な費用を超えてはならないという制限があります。
さらに、公益財団法人として認定されるためには、活動費の過半数が公益目的事業に充てられていることが条件となっています。
「公益財団法人」の収入源は?
公益財団法人の収入は、さまざまな財源から成り立っています。
まず、公益目的事業からの収入があります。ただし、この収入は事業運営に必要な費用を超えてはならないというルールがあります。
次に、会費収入や寄付金収入があり、これらは公益財団法人の重要な財源のひとつです。また、基本財産や特定資産からの運用益も、法人の管理業務に充てるための資金源として活用できます。
さらに、公益財団法人は収益事業を行うことも可能ですが、収益事業の収入は公益目的事業に活用されることが前提となります。
公益財団法人が利益を追求するために収益事業を行うことは認められておらず、公益目的事業とのバランスを保つ必要があります。
他団体との違い
ここでは、他団体との違いについてご紹介します。
NPO法人とは
NPO法人は、特定非営利活動促進法に基づいて設立される法人で、不特定多数の利益のために活動する団体です。
保健・医療・福祉の増進、子どもの健全育成、まちづくりなど、様々な分野における社会課題の解決に取り組んでいます。
NPO法人の大きな特徴は、行政では対応が遅れがちな社会問題に対して、迅速に活動を展開できる点です。
資金面では、会費、寄付金、助成金、補助金など、多様な収入源を持っています。
また、行政のゼネラリストとは異なり、特定分野のスペシャリストとして専門性を持ち、市民参画の主体として民主的な社会実現の核となる役割も担っています。
設立には都道府県や政令指定都市の認証が必要で、法務局での登記により成立します。
公益社団法人とは
公益社団法人は、社会全体の利益を目的として活動する法人で、一般社団法人のうち、公益性の認定を受けた団体のみがこの名称を名乗ることができます。
公益社団法人になるためには、学術・文化振興、高齢者福祉、公衆衛生向上などの公益目的事業のいずれかを主たる目的とし、その事業費用が全体の過半数を占める必要があります。
社会的信用が高く、税制優遇を受けられるというメリットがある一方で、行政庁の監督下に置かれ、財産の保有や事業活動には一定の制限があります。
近年では、公益認定の取得が厳格化しており、申請から認定を受けるまでに相当の期間と費用がかかるとされています。
一般財団法人とは
一般財団法人は、一定額以上の財産を基に設立される非営利法人です。公益財団法人の前段階となる法人形態で、設立時に行政庁の公益認定は必要ありません。
一般財団法人の最大の特徴は、財産の運用に重点を置いている点です。公序良俗に反しない限り、どのような事業でも自由に行うことができ、収益事業のみを行うことも可能です。
設立には複数名の理事、監事、評議員が必要となります。また、設立者に対する利益配当や残余財産の分配は禁止されており、得られた収益は法人の目的達成のために使用しなければなりません。
税制面では、非営利型と普通型の2種類があり、非営利型を選択した場合は、収益事業以外の所得に対して非課税となる優遇措置を受けることができます。
一般社団法人とは
一般社団法人は、複数の社員が集まることで設立できる非営利法人です。
最大の特徴は、設立時の資金要件がなく、法務局での登記のみで比較的容易に設立できる点で、事業内容にも制限がなく公益事業、共益事業、収益事業など、幅広い活動が可能です。
ただし、非営利法人であるため、事業で利益が出ても社員や出資者への分配はできません。得られた利益は次年度以降の活動資金として活用することが求められます。
運営面では、社員総会が最高意思決定機関となり、会費収入が主な財源となります。公益財団法人と異なり行政庁の認定は不要で、より自由度の高い運営が可能です。
「公益財団法人」のメリット・デメリット
ここでは、「公益財団法人」のメリット・デメリットについてご紹介します。
メリット
税制上の優遇措置
公益財団法人には、公益性の高い活動を行う法人として、手厚い税制優遇措置が設けられています。
まず、公益目的事業については法人税が非課税となり、収益事業から公益目的事業への資金移動は「みなし寄附金」として損金算入が認められています。
また、受取利子や配当金などの金融収益に対する源泉所得税も非課税となるため、資産運用による収益を最大限活用できます。
さらに、個人や法人からの寄附に関しても優遇制度があり、個人の場合は所得控除または税額控除を選択できます。法人からの寄附についても損金算入の特例が適用されます。
相続財産や含み益のある資産を寄附した場合も、一定の要件を満たせば相続税や譲渡所得税が非課税となるなど、幅広い税制優遇措置を受けることができます。
社会的信用
公益財団法人は、内閣府または都道府県による厳格な公益認定を受けた法人であり、高い社会的信用を得ることができます。
公益性の審査は民間有識者からなる第三者委員会によって行われ、定められた公益目的事業に該当する活動を適切に実施できるかが厳しく審査されます。
このように厳格な審査をパスした組織であることは、社会からの信頼性の証明となり、他の非営利法人や一般法人と比べて高い評価を受けやすくなります。
また、行政庁による定期的な監督や立ち入り検査があることも、組織の透明性と信頼性を担保する要因となっています。
デメリット
厳格な規制と監督
公益財団法人は、行政庁による厳格な監督下に置かれ、様々な規制と制約を受けます。
具体的には公益認定後、定期的な立入検査が実施され、事業状況、財務状況、経理状況等について詳細な確認が行われます。
また、毎年度の行政庁への報告義務があり、事業計画や事業報告等の提出が必要です。新規事業を始める際にも行政庁の許可や届出が求められ、活動内容は公益目的事業の範囲内に制限されます。
さらに、公益認定基準から外れた運営を行うと、財産の一部を国等に寄付しなければならないなど、厳しい制裁措置も設けられています。
事業活動の制限
公益財団法人の事業活動には、実施できる事業は主務官庁から事前に認定を受けた内容に限定されており、新規事業を始める際にも認定が必要となります。
また、公益目的事業が法人全体の事業費の相当部分を占めなければならず、公益事業の収支は赤字もしくはゼロに抑える必要があります。
収益事業を行うことは可能ですが、それが公益目的事業の妨げとなってはならず、社会的信用を損なわない事業である必要があります。
さらに、公益目的事業に支障をきたすような事業や、公序良俗に反する事業は禁止されています。
これらの制限に違反した場合、行政庁からの監督や、最悪の場合は認定取り消しのペナルティを受ける可能性があります。
運営上の負担
公益財団法人の運営には、多岐にわたる事務負担が発生します。
まず、行政庁への定期的な報告義務があり、事業報告や決算書などの書類作成が必要となります。
また、公益法人会計基準に基づく会計区分(公益目的事業等会計・収益事業等会計・法人会計)の導入が求められ、会計処理が複雑化します。
組織運営面でも、理事会などの各種会議体の運営や、ガバナンス体制の整備が必要です。さらに、プロパー職員の育成や専門人材の確保といった人事面での課題も存在します。
これらの業務に対応するため、法務や会計の専門知識を持つ管理部門・経理部門の整備が不可欠となり、人件費や工数の増加につながります。
「公益財団法人」の働き方や給料は?
次に、「公益財団法人」の働き方や給料について見ていきましょう。
働き方の特徴
公益財団法人は、利益を追求するのではなく社会貢献を目的とする組織であるため、一般的にワークライフバランスが取りやすい職場環境が整っています。
特に、残業が少なく、定時で帰れる職場が多い点が特徴的です。
民間企業と比較して、売上目標や利益追求のプレッシャーが少ないため、比較的落ち着いた働き方ができるというメリットがあります。
給料水準
給与については、公益財団法人の規模や活動分野によって大きな差があります。
大手の公益財団法人(医療、学術、国際支援など)
民間企業並み、またはそれ以上の給与水準のところもあります。特に医療系・学術系の大規模法人では、高い専門性を求められるため、給与も高めに設定されていることが多いです。
中小規模の公益財団法人
給与水準はやや低めになる傾向があります。特に、助成金や寄付金に依存する団体では、人件費に充てられる予算が限られているため、一般企業と比べて給料が低くなりがちです。
職種による違いもあり、事務職や総務職は比較的給与水準が低めですが、研究職や専門職(医師、研究員、技術者など)は、民間企業と同程度かそれ以上の給与水準が期待できます。
福利厚生と安定性
公益財団法人は、福利厚生が充実している点も魅力の一つです。多くの法人では、以下のような福利厚生が整っています。
- 年次有給休暇の取得率が高い
- 夏季休暇や年末年始休暇がしっかり取れる
- 健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険が完備
- 育児・介護休業制度が整っている
- 退職金制度がある法人も多い
また、雇用の安定性が高い点も大きなメリットです。
公益財団法人は、公的機関や企業の寄付、補助金によって運営されるため、倒産リスクが低く、長期的なキャリア形成が可能な職場環境となっています。
「公益財団法人」とはまとめ
公益財団法人は、公益性が認められた非営利法人で、社会貢献を目的に活動する組織です。一般財団法人とは異なり行政庁の認定が必要で、税制優遇を受けられるのが特徴です。
また、安定した給与水準と働きやすい労働環境が整っており、NPO法人や一般社団法人とは設立手続きや事業内容に違いがあり、より幅広い公益事業を展開できます。
医療機関や福祉施設など、私たちの身近な施設の運営にも関わっているため、興味がある方は求人情報をチェックしてみてください。