「テレワーク導入の課題やデメリットは何?」

「課題の解決策や成功事例を知りたい!」

コロナ禍でオフィスに通勤せずに自宅などで働くテレワーク・リモートワークが注目されており、導入する企業も増えています。しかし、テレワークには弊害もあるのではと課題感を抱く方もいるでしょう。

そこで、今回は企業がテレワークを導入する際の課題やデメリットを明らかにして、どのような解決策・改善策があるのかを成功事例を含めて詳しく紹介します。

この記事をご覧になれば、テレワークの現状と導入の課題や解決策がよくわかり、円滑に導入を進めることができるでしょう。

テレワーク導入の課題についてざっくり説明すると
  • テレワーク・リモートワークは、働き方改革の重要な柱
  • 新型コロナ感染拡大に伴う緊急事態宣言もあり、テレワーク導入企業が着実に増加
  • テレワーク実施率は、業種の特性や職種によって大きな違いがある

テレワーク・リモートワークの現状

まず、テレワーク・リモートワークの現状について紹介します。

テレワーク・リモートワークは、政府が推進している働き方改革の重要な柱です。加えて、新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言もあり、テレワークを導入する企業が着実に増加してきています。

下のグラフは、東京商工リサーチが民間企業を対象に実施した「新型コロナウイルスに関するアンケート調査」を基に、テレワーク実施率の推移を表したものです。

グラフ

出典:東京商工リサーチ「新型コロナウイルスに関するアンケート調査」

テレワーク実施率は、宣言発出前の2020年3月上旬には17.6%でしたが、同年4月7日から5月25日までの1回目の緊急事態宣言を受け、5月下旬には56.4%へと急上昇しています。

その後、5月25日に全地域の緊急事態宣言が解除されると、テレワーク実施率は一旦30%程度まで低下しました。しかし、2021年1月8日~3月21日までの2回目の緊急事態宣言が出ると、同年3月上旬には38.4%に再上昇したのです。

このことから、コロナの動向がテレワーク実施率に大きな影響があったことが伺えます。

業種別・職種別のテレワーク実施率

下の表は、民間のアンケート調査(パーソル総合研究所「第六回・新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」)をもとに、業種別テレワーク実施率をまとめたものです。

業種別テレワーク実施率

業種

調査サンプル数

テレワーク実施率(%)

建設業

 1,320 

25.3

製造業

5,882

31.0

電気・ガス・熱供給・水道業

425

31.8

情報通信業

1,727

63.0

運輸業,郵便業

1,557

13.1

卸売業,小売業

1,994

21.0

金融業,保険業

1,350

36.0

不動産業,物品賃貸業

386

25.3

学術研究、専門・技術サービス業

(法律、税理士、測量など)

204

43.8

宿泊業,飲食サービス業

428

10.2

生活関連サービス業,娯楽業

440

19.5

教育,学習支援業

361

19.8

医療,介護,福祉業

1,604

7.0

その他のサービス業

1,839

29.0

上記以外の業種

973

33.4

出典:パーソル総合研究所「第六回・新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」

テレワーク実施率を業種別で見ると、業種の特性によって大きな違いがあります。実施率が最も高いのは、情報通信業で63.0%とかなりの高率です。続いて、学術研究・専門・技術サービス業が43.8%になっています。

一方で、実施率が最も低いのは、医療・介護・福祉業で7.0%と1桁にとどまっています。宿泊業・飲食サービス業も10.2%と低率です。これらの業種は、対人サービスが不可欠ですので、当然の結果とも言えます。

次の表は、同じアンケート調査をもとに職種別テレワーク実施率をまとめたものです。

職種別テレワーク実施率

職種

調査サンプル数

テレワーク実施率(%)

Webクリエイティブ職

(Webデザイナー、プランナーなど)

50

76.9

IT系技術職

1398

65.5

企画・マーケティング

343

61.4

経営企画

470

54.9

広報・宣伝・編集

91

54.2

コンサルタント

56

53.3

商品開発・研究

878

53.2

営業推進・営業企画

557

43.24

営業職(法人向け営業)

1,495

40.4

総務・人事

1,449

37.3

資材・購買

281

35.2

財務・会計・経理・法務

1,190

34.5

クリエイティブ職

(デザイン・ディレクターなど)

124

33.2

営業事務・営業アシスタン

732

29.8

顧客サービス・サポート

432

26.6

その他専門職

250

26.1

事務・アシスタント

1,981

25.7

建築・土木系技術職

(施工管理・設計系)

419

24.7

生産技術・生産管理・品質管理

1,244

23.5

その他

1,052

21.5

営業職(個人向け営業)

613

20.0

受付・秘書

98

18.4

教育関連

94

15.3

【飲食以外】接客・サービス系職種

391

7.7

警備・清掃・ビル管理

274

6.7

医療系専門職

291

6.5

販売職(販売店員、レジなど)

526

6.0

配送・倉庫管理・物流

408

5.8

【飲食】接客・サービス系職種

217

5.3

建築・土木系技術職

(職人・現場作業員)

132

4.8

軽作業

(梱包・検品・仕分/搬出・搬入など)

57

4.6

製造(組立・加工)

1,478

4.5

福祉系専門職

(介護士・ヘルパーなど)

640

4.3

理美容師

(スタイリストなど含む)

28

3.5

ドライバー

609

2.7

幼稚園教諭・保育士

141

1.1

出典:パーソル総合研究所「第六回・新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」

テレワーク実施率を職種別で見ると、こちらも職種によって大きな違いがあります。

実施率が最も高いのは、Webクリエイティブ職で76.9%と8割近くに上っています。続いて、IT系技術職、企画・マーケティングが6割を超え、経営企画、広報・宣伝・編集、コンサルタントなどが5割を超える高率です。

一方で、実施率が最も低いのは、幼稚園教諭・保育士で1.1%に過ぎません。また、ドライバー、理美容師、福祉系専門職なども低率です。これらは対人業務ですので、当然の結果と言えます。また、アシスタント職や経理・人事、建築・土木系なども20%台と比較的低い数値となっています。

企業が抱えるテレワークの課題

グラフ

出典:日本労働組合総連合会「テレワークに関する調査2020」

上のグラフは、日本労働組合総連合会行った「テレワークに関する調査2020」の設問「テレワークのデメリットだと感じていること」のアンケート結果です。

デメリットと感じている項目・割合は少なくなく、様々な課題が浮き彫りになっています。以下では、それぞれの課題について詳しく取り上げます。

勤怠管理を把握するのが難しい

まず、「勤務時間とそれ以外の時間の区別がつけづらい」と感じている方が44.9%と最も多くなりました。企業側からすれば、勤怠管理を把握するのが難しいということです。

オフィスに出勤して仕事をしているのであれば、タイムカードを使うことにより出勤時間をきちんと記録に残せます。上司は何時でも部下の勤務状況を確認できるのです。しかし、テレワークの場合は、別途勤怠管理システムを整えなければ、社員の自己申告に頼らざるを得ません。それでは信頼性のある勤怠管理とは言えないでしょう。

特に、テレワークやリモートワークではフレキシブルな働き方が増えていますが、勤務時間内に私事をして、時間外で仕事を行うこともありえます。そのため、勤怠報告の信頼性が低くなってしまうだけでなく、上司の目が行き届かず、長時間労働に気づかない事態も懸念されます。

コミュニケーション不足に陥る

次に、37.6%と多くの方が「上司、同僚とのコミュニケーションが不足」することをデメリットと感じています。企業側も、テレワークの課題として最も強く感じている部分です。離れて仕事を行うリモートワーク・テレワークですからやむを得ないことですが、物理的な距離ができてしまうのです。

オフィスにいれば、いつでも声がけできます。素早いきめ細やかな意思疎通が可能です。しかし、テレワークでは、伝えたいことがあっても、その都度文字を打ち込んでチャットをするか、オンラインミーティングなどでコミュニケーションをとらなければなりません。

その煩わしさから連絡を躊躇してしまうと、業務内容の確認やトラブル対応などの意思疎通がスムーズにいかず、仕事の方向性の認識のずれなどの弊害も起きかねないのです。

顧客・取引先とのコミュニケーションが不足

コミュニケーション不足は社内だけの問題ではありません。顧客や取引先との社外コミュニケーションが不足して、意思疎通の齟齬が生まれてしまうこともあるのです。

日経BP総合研究所の「新たな働き方に関する調査」によると、「取引先や顧客とのコミュニケーションに支障がある」と回答した割合は、2020年4月調査で20.6%、10月調査で25.5%にもなっています。ICT環境がしっかり整っていないと、企業間でのコミュニケーションも取り難くなってしまうのです。

業務効率が低下

また、テレワークのデメリットとして「業務の効率が低下する」との回答も20.3%と高率です。実際に、テレワーク・リモートワークの導入に際して、業務効率や生産性の低下を懸念する声も少なくありません。

下のグラフは、テレワーク時の生産性について正社員にアンケートした結果を示したものです。

生産性

出典:株式会社バーソル総合研究所「第四回・新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」

職場出勤時の仕事の生産性を100%として、テレワーク時にどの程度になるかを聞いたものですが、全体平均は84.1%でした。つまり、職場への出勤時と比べてテレワークによって生産性が低下していると感じられている結果になっています。

一方で、100%以上の生産性を生み出しているとの回答も3割以上あります。業種の特性もあるでしょうが、それだけでなく、各企業のテレワーク体制の充実度によって違いが出てきているものとみられます。

人事評価はより困難に

適正な評価が行われるのか不安」との回答も16.6%と、少なからずありました。従業員が不安になるだけでなく、企業側としても、上司が従業員の働きぶりを直接観察できないこと、実際に仕事の成果に結びつく働きをどの程度行っていたのかを可視化し難いという課題・弊害もあるのです。

もちろん、目に見えやすく定量化しやすい業務であれば、売上などの明確な指標を使って不公平感がない人事評価を行うことも可能です。しかし、バックオフィス業務など業務内容によっては、定量的に計測し難い業務もあります。

そのため、従来どおりの評価基準で良いのか、それとも目標管理制度などを導入した方が良いのか、などと迷うこともあるでしょう。きちんとした評価基準を作ることができなければ、社員に不公平感を抱かせてしまいかねません。

情報漏洩のリスクが大きくなる

「情報漏洩のリスクが高まる」との懸念も16.1%と大きいです。オフィスのパソコンは、ファイアウォールなどで外部からの攻撃や不正アクセスから社内ネットワークをガードしています。一方、テレワーク、特に在宅勤務の場合、徹底した対策は難しく、外部からの攻撃や不正なアクセスを受けるリスクが高くなります。

特に情報漏洩のリスクにつながりかねない課題として、以下では「アクセス権限の設定不備」「マルウェア感染」「VPNの脆弱性」の3つの問題を取り上げます。

アクセス権限の設定不備による漏洩

アクセス権限の設定不備があると、個人情報や機密情報が漏洩するリスクがあります。サーバーメンテナンスの際に、外部からのアクセスを可能な状態にしてしまい、大規模な不正アクセス被害につながったケースもあります。

大事なことは、アクセス権限を極力絞ることです。テレワーカーや使用端末からのアクセスは、必要最小限の範囲に止めましょう。

また、定期的にアクセス制御がきちんと保たれているかをチェックすることが大切です。特に社内システムのアップデートやメンテナンスの際は、権限設定に不審な変更や不要なルールが追加されていないかの確認は欠かせません。

社内システムがマルウェアに感染する

テレワークになると、システムへのアクセス経路が増えるため、マルウェア感染リスクが高くなります。実際に、従業員が不用意に不審なメールの添付ファイルを開封したため、マルウェアに感染し、従業員の氏名やメールアドレスなどの個人情報が漏洩した事故も起こっています。

テレワークに移行するのであれば、社員への情報セキュリティ教育が必須です。少なくとも「不審メールは開封しない」「セキュリティ管理者に報告」「必要なら送信者に確認」の3点を徹底しましょう。

また、セキュリティ対策が不十分なフリーメールなど、最新のマルウェアに対応できないサービスの使用を制限することも必要です。事前に自社のセキュリティポリシーを見直し、業務上使用を許可する製品やソフトウェアを明確に限定しておきましょう。

VPNの脆弱性をつかれたサイバー攻撃

VPNは通常のインターネット回線よりもセキュリティが強化されていますが、脆弱性は残ります。実際にVPNの脆弱性をつかれ、機器のIDやパスワードが流出した被害も起きています。

運用外にしていたVPN機器のファームウェアをアップデートせずに、稼働させるのはNGです。リモートアクセスのためにVPNを利用する場合は、必ず機器のファームウェアを最新の状態にアップデートしましょう。テレワーカーに対しても、自分が使う機器のパッチやアップデートを定期的に行うように徹底しておくことが大切です。

長時間労働に陥りやすい弊害も

長時間労働になりやすい」という弊害を指摘する声も1割以上(12.9%)あります。

テレワーク中の労働時間を正確に把握し、長時間労働を防ぐためには休日や深夜・時間外のメール送付の禁止や、社内システムへのアクセス制限が効果的です。

また、役職者などからの注意喚起、就業規則への記載などにより、時間外・休日・深夜労働や長時間労働を原則禁止にすれば、テレワーカーの労働安全衛生を守ることができます。

さらに、長時間労働などのアラート機能を持つ労務管理システムもありますので、積極的に活用することもおすすめです。

プロジェクトやタスクの進捗管理

仕事の進捗管理が難しいことも課題として上げられています。オフィス勤務であれば、朝礼や定期的な会議の場もあり、業務中でも手軽にコミュニケーションが取れます。上司も、社員の仕事内容や業務の進行状況の把握が容易です。何か問題があった時は、すぐに相談して必要な対策を取ることも可能です。

しかし、テレワークになると、こまめなコミュニケーションが取り難く、状況把握・管理が難しくなります。タスク管理シートを作成するなどの対策を講じても、記入漏れや認識違いなどもあって、必ずしもうまくいくとは限りません。

チャットや電話などでこまめに確認すれば良いのですが、手間暇がかかりますので、対応がおろそかになりがちです。

ワークフローの見直しを迫られる

ワークフローの見直しを迫られることも結構な負担です。オフィス勤務であれば、業務管理は紙の書類がメインで、稟議書には押印が必要というのが一般的な流れです。

しかし、テレワークになると、文書をデータ化し、押印不要あるいは出社せずに押印できるようにするなどの対応が必要になります。そのため、テレワーク用のシステムを導入して、ワークフローを改善する必要が出てくるのです。

しかし、慣れ親しんできた仕事の進め方を変えるのは、容易ではありません。ペーパーレス化が期待通りに進まないことや、押印のためだけに出社する事態も十分あり得るのです。

テレワークの導入・運用にコストがかかる

テレワークの導入・運用にコストがかかる」ことが課題という声もあります。特に中小企業にとっては、大きな負担になっているとの声が大きいです。

テレワークの導入費用としては、次のようなものがあります。

  • パソコン・スマートフォン・タブレットなどの情報通信機器
  • Web会議・チャットツ・勤怠管理などのビジネスツール
  • インターネット利用のための通信回線

テレワークと無縁であった中小企業が、費用をかけてテレワーク環境を整備することは、大きな負担です。

ただ、導入のための初期負担はかなり大きいですが、いったん導入してしまえば、不要になったオフィススペース分の賃料カットや通勤費用の削減が見込めるなどの改善点も出てきます。

社内の中でも実施できる部署・そうでない部署との差が広がる

社内で実施できる部署とそうでない部署との差が広がることもデメリットです。同じ会社でも、全部門がテレワークになじむわけではありません。

業務の性質上、テレワークを実施しにくい部門や実施メリットが少ない部門もあります。そのため、一定の部門だけでテレワークを導入したり、社員の一部だけを在宅勤務とする企業も少なからずあるのです。

しかし、テレワークの対象になる部門と対象にならない部門が併存すると、テレワーカーとオフィスワーカーの間で勤務条件・労働環境などに差ができてしまいます。そのことが、従業員間に不公平感を生むこともあるのです。

労災認定が難しい

労災認定が難しいことも課題です。テレワークをしている従業員にも労災保険が適用されます。ただ、労災と認定されるためには、「業務遂行性」と「業務起因性」の2つの要件を満たす必要があります。

就業時間内であっても、私的行為が原因の場合はこの要件に該当せず、労災とは認められません。

しかし、テレワークの場合、負傷原因が業務行為なのか、私的行為なのかが判然としないことも多く、証明が難しいのが現状です。私的行為とは、たとえば、次のような行為です。

  • 昼休みに食事に出て負傷した
  • 業務の合間に育児をしてぎっくり腰になった

特に在宅勤務の場合、勤務時間中でも日常生活との切り離しが難しいことも多く、証人もいないこともあり、労災認定が難しくなります。

従来のデータ共有手法が使いづらい

テレワークでは従来のデータ共有手法が使いづらいという問題もあります。

オフィスワークであれば、同じ社内で勤務しますので、ファイルサーバーを設けるだけでデータ共有が可能でした。しかし、テレワークでは各社員が全く離れた場所で業務を行うため、従来のシンプルな方法ではデータ共有が困難です。

特に紙資料でしか保存されていない書類の扱いは厄介です。オフィスワークでは探したい資料をすぐ取り出せますが、テレワークでは出社して探さなければならないことも多いでしょう。情報共有ツールを導入するなどの対策が必要になります。

業種によってはテレワークが難しいことも

「仕事内容がテレワークになじまない」あるいは「できる業務が限られている」ことなどから、導入自体がそもそも難しい業種もあるのです。

たとえば、以下のような業種や職種では導入のハードルが高い場合も多いでしょう。

  • 対面でのコミュニケーションが必須な業種や職種:医療・福祉関係、接客・販売業など
  • 現場での作業が必要な業種や職種:製造業・運輸業・建設業など
  • 紙での業務や押印が多業種や職種:総務・経理関係など
  • 電話やFAXでの受発注を行っている業種や職種:飲食業など

従業員が抱えるテレワークの課題

次に、従業員の側から見たテレワークの課題を紹介します。

コミュニケーションに大きな障壁が生まれる

コミュニケーションの問題は、会社側だけでなく社員側にとっても大きな障壁になります。オフィスワークであれば、わからない部分があっても上司や同僚に気軽に聞くことができます。

しかし、テレワークの場合はWeb会議などのパブリックなコミュニケーションがメインです。何気ない気軽なコミュニケーションができなくなりますので、疑問点があっても直ぐに聞いて解決することはできません。

同僚や上司との信頼関係を育むことも困難になりがちです。チーム内の連携不足が続いてしまうと、次に説明するようなメンタルヘルスの課題を惹起しかねないのです。

メンタルヘルスも課題の一つ

メンタルヘルスも従業員が抱えるテレワークの課題です。オフィスワークであれば、満員電車での通勤でストレスと感じる方もいるかもしれませんが、通勤すること自体が運動になります。

これに対して、移動の機会がほとんどないテレワークは運動が不足しがちです。それだけでなく、オンオフの切り替えが難しいため長時間労働に陥りやすいという問題もあります。ついには、過労や自律神経の乱れなどに繋がってしまうこともあるのです。

そうでなくても、長時間座り続けがちで、姿勢の悪化から肩こりを引き起こすこともあります。

また、コミュニケーションの少なさによるメンタル面の影響も出てきかねません。コロナ禍で精神的に参ってしまい、心身のバランスを崩して休職になるケースも出ています。

プライベートと仕事の切り替えが難しい

プライベートと仕事の切り替えが難しいことも大きな課題です。テレワークを始める前は「仕事はオフィス、自宅はプライベート優先」と使い分けていた方は、テレワークになったからと言って簡単にオンオフの切り替えはできません。

しかも、家族と暮らしている場合は、業務に集中できる環境を作って保ち続けることの難しさもあります。そのため、何とか業務を終わらせようとして長時間働き続ける結果となってしまうのです。

オフィス勤務と同じような仕事をしていても、勤務が厳しいと感じてしまうことが多いのです。

テレワークのデメリットを改善する解決策

ここでは、テレワークのデメリットを改善する解決策を紹介します。

バーチャルオフィスを活用する

バーチャルオフィスは、オンライン上で擬似的にオフィスを再現したツールです。常に社員がバーチャルオフィスにいることで、いつでも気軽に顔を見ながら会話することが可能です。

同僚や上司とのコミュニケーション不足がテレワークの最大の課題です。バーチャルオフィスはコミュニケーション不足解消に一助となること間違いなしでしょう。

ツールによっては、作業用・会議用・休憩用などとスペースを区切ることができるもの、「離席中」「会話OK」など1人1人のステータスを表示できるものなど、便利な機能がついているのも魅力です。

バーチャルオフィスはMetaLifeがおすすめ

MetaLife

バーチャルオフィスを活用するなら、特にMetaLifeがおすすめです。

MetaLifeは、アバターとなってオンライン空間上に集まり、近くにいるアバター同士で会話ができるツールです。

アバターは自由に空間上を移動できるため、話したい人に近づくだけで顔を見てコミュニケーションができます。

また、背景は自由にデザインすることができ、会議室や集中したい人向けのスペースなど、オフィスを自分好みに区分けできます。

MetaLifeを無料で始めてみる!このようにMetaLifeを利用すれば、テレワークでもまるでオフィスにいるかのような感覚で仕事ができるので、コミュニケーション量や生産性を向上することができるのです。

コミュニケーションツールを有効活用

バーチャルオフィス以外にも、コミュニケーション解消に繋がるツールは多くあります。 現在よく使われているコミュニケーションツールとしては、次のようなものがあります。

  • 社内用ビジネスチャットツール
  • ビデオ会話OKのWeb会議ツール
  • Web商談用ツール

これらを有効活用することでコミュニケーション不足を改善できれば、デメリットの解決策の1つになるでしょう。

ただし、現在のツールではコミュニケーションが十分改善できないこともあります。そのような場合は、社員相互の交流機会やFVの機会を定期的に設けるなどして、不足分を補う必要があります。

勤怠・タスク管理に役立つクラウドシステムを導入

勤怠管理を正確に行えない、タスク管理を効率的にできない時は、勤怠・タスク管理に役立つクラウドシステムを導入することも、課題解決の良い方法です。

勤怠・タスク管理などの業務に役立つ主なクラウドシステムとしては、次のようなものがあります。

勤怠・タスク管理に役立つクラウドシステム一覧

種類・用途

クラウドシステム

勤怠管理やタスク管理に関するもの

メンバーのスケジュール管理ツール

進捗を共有できるタスク管理ツール

勤怠管理システム

SFA(Sales Force Automation)などの営業支援ツール

事務や管理業務に関するもの

基幹業務システム(会計・経理・経費精算・ERPなど)

情報共有が可能なオンラインストレージ

ペーパーレス化ツール(クラウドストレージや電子契約システム)

電話や支援ツール

CTI(コンピュータと電話やFAXの連携)

PBX(構内交換機)のクラウド化

現在は幅広いシステムがリリースされています。クラウド化やペーパーレス化を進めることで、テレワーク中も業務効率を落とすことなく、スムーズに業務を行えるのです。自社の規模や課題に合う最適なツールを見つけましょう。

セキュリティ関連のツールを導入

適切なセキュリティ関連ツールを導入することも、大事です。テレワーク中のセキュリティリスク対策となるツールは、以下のようなものです。

機密情報を社員が個人で所持・利用することを防ぐツール

  • セキュアブラウザ(データは使用後に自動的に削除される)
  • セキュアコンテナ(私物デバイスも業務ソフトへの暗号化アクセス可能)

個人のPCで業務を行ってもデータが残りませんので、安全にアクセスできます。

外部への情報漏えい防止するツール

  • パスコードロックをしたUSBデバイス
  • アクセス管理や通信の暗号化
  • 会社支給のWi-Fiルーター
  • VPN回線の使用

情報漏えいのリスクは、ネットワークへの不正アクセスや、デバイスの紛失・盗難対策を徹底することで下げることができるのです。

バックオフィスのクラウド化を推し進める

バックオフィスのクラウド化の推進も重要な対策です。クラウド上にデータを保存することで、どこからでも作業が行えます。

クラウド化できるシステムとクラウド化のメリットは、次のようなものです。

  • CTI/PBX:自宅で社内と同じように電話対応できます。
  • ERP:基幹業務システムです。どこからでもアクセス可能になります。
  • SFA:営業支援ツールです。自宅で状況確認や取引先の管理ができます。
  • 会計・経理システム・経費精算:ネット環境さえあれば操作可能です。
  • 電子契約サービス:オンラインでの署名押印に必要です。
  • グループウェア:メール・スケジュールなどの機能をまとめたツールで、情報共有をスムーズに行えます。
  • プロジェクト管理ツール:計画的に業務を進めるためのツールです。
  • オンラインストレージ:紙資料をデータ化することでデータ共有が可能になります。
  • ワークフローシステム:承認・決裁の流れを電子化すれば、意思決定をスピードアップできます。

テレワークに向く業務を明確にする

オフィスで行っていた業務は、テレワークでもすべてやる必要があると考える方も多いでしょう。しかし、テレワークには向いている業務と向いていない業務があるのです。

その違いを明確にしておくことがテレワークを成功に導くポイントの1つです。また、従業員の仕事を一括りにして、テレワークの向き・不向きを判断するのは避けましょう。

現時点でテレワークに向かないと考えられても、業務プロセスの見直し、ICTツール導入などにより、テレワークが可能になることもあるのです。

人事制度を見直す

従来のオフィス勤務を前提とした人事制度を見直す必要もあります。テレワーク主体のワーカーやオフィスに出勤する頻度が低いワーカーについては、やる気やプロセスの評価がしづらく、成果による評価のウエイトが大きくなるでしょう。従来の就労規則はそぐわなく、変更する必要が出てくるのです。

厚生労働省は、人事評価にあたっての注意点として次のような点を挙げています。

  • 業績管理や人事評価について、テレワークを行う労働者に対し通常の労働者と異なる取り扱いを行う場合は、その内容を説明することが望ましい。
  • 仕事の成果に重点を置いた評価を行う場合、評価者に対して労働者の勤務状況が見えないことのみを理由に不当な評価を行わないよう注意喚起することが望ましい。

テレワーク導入手当を設けて環境整備を進める

テレワーク導入手当を設けて環境整備を進めることも解決策の1つです。テレワークにするとなると、在宅などでの作業環境の整備が必要になります。たとえば、自宅内の高速ネットワーク環境構築、パソコン・モニターやデスク・椅子などの執務用機材です。

これらの環境を整えるためには、相当高額の負担になることもあります。個人負担だけでは困難な場合も多いでしょう。

テレワーク導入により縮減できるオフィス賃料や通勤手当代を財源にして、新しい手当を支給することも検討すべきです。また、中小企業に向けたテレワーク導入の補助金もありますので、活用しましょう。

テレワークを導入するメリット

ここでは、テレワークを導入するメリットを紹介します。

生産性向上につながる

テレワークを導入するメリットは、業務効率が上昇し、生産性向上につながることです。多くの企業は、導入の際に業務フローの見直しや資料の電子化を行っています。それが確実に生産性の向上を持たらすのです。

総務省が発表した「働き方改革のためのテレワーク導入モデル」によると、テレワークの導入により、実際にNTTドコモでは残業時間が前年度比で10%減少しています。さらに、日本取引所グループでは前年度比10%以上の削減を行うことに成功しています。

効率性アップに伴う労働時間削減

また、業務の効率性アップに伴い労働時間の削減が可能になることも大きなメリットです。とりわけ、営業職・システムエンジニア・スタッフ職などの業務効率化が期待できます。

営業職やシステムエンジニアの場合、サテライトオフィスなどを活用することで、よりスピーディな顧客対応が可能になります。たとえば、テレワークでオフィスへの出勤を減らせば、浮いた移動時間をサテライトオフィスでの顧客対応に充てることもできるのです。

優秀な人材確保と離職を防止できる

さらに、優秀な人材確保と離職を防止できることも見逃せません。ICT・クラウドサービスの活用は、ワークライフバランスの向上に貢献するからです。

従来のようなオフィス勤務では、育児や介護のために退職・休職しなければならない事態もありました。しかし、テレワークであれば、通勤に必要だった時間を家族と過ごす時間に活用できます。その結果、離職しなくてもすむ可能性が高まります。

仕事を続けたい労働者と、優秀な労働者に働き続けてもらいたい企業の双方にとって大きなメリットです。

固定費削減に効果を発揮

I CT・クラウドサービスを活用してテレワークを推進すれば、固定費の削減効果も期待できます。削減が期待できる主なコストとしては、次のようなものがあります。

  • オフィス費用(賃料、機器リース料、通信費、光熱費、備品費、維持管理費など)
  • 交通費
  • 残業代
  • システム構築費用
  • サーバーメンテナンス費用
  • サーバー管理担当者の人件費

グローバル対応にも重宝する

テレワークの導入は、グローバル対応にも重宝します。グローバル化が一層進展し、国内企業とのやり取りだけでなく、海外企業との連携や対応が日常茶飯事になっています。

これまでのオフィスワークであれば、時差のある海外との連絡や交渉のために、深夜遅くまで残業することや早朝に出勤が必要なこともあったでしょう。しかし、テレワークを活用することで、在宅で海外の企業や顧客への対応がよりスムーズにできるようになるのです。

テレワーク導入で企業イメージをアップできる

テレワーク導入で企業イメージをアップできます。テレワーク・リモートワークによって、ライフスタイルにあわせた働き方ができるようになれば、従業員の満足度も高まります。さらに、従業員からの信頼感の向上にもつながります。

テレワークを導入している職場は、従業員の働きやすさに配慮してワークライフバランスの実現を重視している企業と見られ、採用力もアップするでしょう。社会から見た企業のイメージアップも期待できるのです。

非常時でも事業を継続できる

テレワークを導入することにより非常時でも事業を継続できます。在宅勤務であれば、地震などの災害や停電・公共交通機関の混乱などの非常時にも、事業継続がしやすいです。テレワーク環境を整えておくことは、非常時対策としてもとても有益です。

また、新型インフルエンザなどがまん延した際も、在宅で仕事を続けられるので、通勤などで他人と接触する必要がなく、感染を防ぐことができます。

ただし、非常時にスムーズにテレワークを続けられるように、テレワークでの働き方をよく考えて慣れておくことが重要です。

テレワーク導入の成功事例を紹介

ここでは、厚生労働省のテレワーク総合ポータルサイト 導入事例 から、テレワークの導入に成功した事例をいくつか紹介します。

これらの事例からテレワーク成功のための鍵を見つけて参考にしてください。

ケース1 味の素株式会社

味の素株式会社は、「Eat Well Live Well」のキャッチコピーで有名です。

総従業員数3,464名中、2,922名がテレワークを利用しています(2018年3月時点、過去1年間)。社員のテレワーク利用率は、8割以上と高率です。

テレワークへの取り組みは、「どこでもオフィス」という名称のもと、自宅やサテライトオフィスだけでなく、「セキュリティの確保と集中できる環境」があれば、どこでも勤務できるテレワーク制度を導入しています。テレワークの導入は、多様な人財の活躍に不可欠な要素とされているのです。

そのため、トップ自らがテレワークを積極的に推し進め、浸透を図っています。たとえば、中期経営計画にテレワークを含んだ働き方改革推進の取り組みを入れたり、経営陣の会議をサテライトオフィスで実施するなどの取組みを行っています。

また、社内情報サイト「るるく」で各部署のテレワークの良い事例を月2回以紹介するなどして、テレワーク浸透を図っているのです。テレワークの課題である情報通信環境整備にも力を入れています。

ケース2 東急株式会社

東急株式会社は、不動産業、生活サービス業、鉄道事業などを展開しているグループ企業です。

総従業員数5,041名中、1,327名がテレワーク利用しています(2019年10月時点、過去1年間)。

テレワークの勤務形態は、終日在宅勤務・部分在宅勤務・モバイル勤務 サテライトオフィス勤務  です。

テレワークの社内ガイドラインを整備し、対象者である本社勤務員が誰でも閲覧できる社内向けイントラネットホームページに掲載しています。さらに、コミュニケーション支援ツール「トークwithシート」を導入して、上司と部下が何でも相談できる体制を整え、コミュニケ―ション不足を招かないようにしています。また、会員制サテライトシェアオフィス「NewWork」を全国に130カ所以上開設し、全国レベルでのテレワーク普及促進に寄与しているのです。

ケース3 日本航空株式会社

日本航空株式会社は、日本で最も長い歴史のある航空会社です。2021年度には、国内線・国際線ともに旅客数第1位の実績があります。

総従業員数32,753名中、5,177名がテレワークを利用しています(2016年度、過去1年間)。

テレワークについては、早くも2015 年から在宅勤務制度を導入し、2017 年には自宅以外の場所でも勤務可能にしました。テレワークを浸透させるために、間接部門社員を対象にしたスキルアップワークショップや「テレワークのススメ」講座も実施しています。

また国内・海外を問わずテレワークを実施できる「ワーケーション」に取り組んでいます。ワーケーションは、業務の都合で休暇取得をためらうことや、休暇を中断することのないよう、休暇中に休暇先でテレワークを可能とするものです。

「ポストコロナ」のテレワーク

新型コロナ対策として多くの企業がテレワークを実施しはじめており、テレワークはもはや当たり前の働き方へと変化しています。一方で、短期間でのテレワーク導入により、マネジメントの難しさ、コミュニケーション不足などの課題も表面化しました。

このようなテレワークの位置付けと課題を踏まえ、総務省のタスクフォースは、「ポストコロナ時代におけるテレワークの在り方」の提言を2021年11月にまとめています。

主な提言内容は、次の通りです。

  • コミュニケーション不足を補うため、ICTツール(例:バーチャルオフィス)の導入促進
  • 生産性向上やダイバーシティ推進と併せて、企業行動を変容させる仕組みについて検討
  • ワンストップ支援窓口を設置
  • 各省ごと・施策ごとのWebサイトを統合、一元的な情報発信を強化
  • 在宅勤務手当を非課税とする事務負担の実態調査

出典:総務省「「ポストコロナ」時代におけるテレワークの在り方検討タスクフォースの提言内容」

テレワーク導入の課題についてまとめ

テレワーク導入の課題についてまとめ
  • 企業が抱えるテレワークの課題は、勤怠管理・コミュニケーション・人事評価が困難など
  • 従業員が抱えるテレワークの課題は、メンタルヘルス・プライベートと仕事の切替えの難しさなど
  • テレワークのデメリットの解決策は、バーチャルオフィスを活用・コミュニケーションツールの有効活用・クラウドシステムの導入・人事制度の見直しなどがある
  • テレワークを導入するメリットは、生産性向上・固定費削減・企業イメージのアップなどがある

企業がテレワークを導入する際の課題やデメリットと、解決策・改善策などを成功事例を含めて紹介しました。

テレワークはコロナ対策もあって急速に浸透してきました。乗り越えるべき課題があるのも事実ですが、テレワークを導入するメリットは大きなものがあります。国も力を入れており、今後一層普及が進むものと見込まれています。

この記事を参考にして、テレワークの効果的な導入に向けて前向きに環境整備を進めてみてください。